地域資源マネジメントとは
コウノトリとジオパークという「自然資源」の保全と活用、つまり野生復帰とジオパーク事業のマネジメント理論を構築し、地域社会活性化を「民学(および官)連携」の立場から実践してきた兵庫県立大?自然研は、これまでに培った理論と実践スキルを、汎用性の高い新たなマネジメント論に統合?昇華し、大学院教育を通じて、「独自の理論をもって地域社会活性化を実践できる後進の育成」を指向するにいたった。このことを実現する新たな学問領域が「地域資源マネジメント」であり、それは以下のように定義される。
1)地域資源
地域に内在する自然資源と、これに基づいて成立している社会?文化資源を「地域資源」と捉える。
2)学問領域を時間軸と空間軸で統合する高度な教養
地域資源マネジメントは、地球科学(ジオ)?生態学(エコ)?人文社会科学(ソシオ)という三つの学問分野を基盤とする。これらは、それぞれ大きく異なる時間スケールを扱うが、「地域の歴史」という時間軸(縦軸)と「地域社会」という空間軸(横軸)を共有することにより、これらを総合的に扱う新たな視座がひらける。すなわち、地域の大地上?生態系内での相互作用の結果として進化?発展してきた「自然?社会?文化のダイナミックな関係性」を重層的?有機的つまり構造的に解明しようとする視座であり、この関係性を中心にすえた知の体系を「人と自然に関する高度な教養」と名づける。
3)民学連携による地域資源の発掘と保全?活用
「人と自然に関する高度な教養」を身につけたうえで、つまり地域における自然?社会?文化の歴史的関係性の理解?認識を踏まえて、現代及び未来の社会へ目を向ける。すなわち、各学問分野のあつかう素材を、持続可能な地域社会をつくりあげるための地域資源と捉え、これを民学連携、つまり地域住民との連携?協働の「過程と成果の共有」を通して実現する。このことにより「学」の有する理論を「民」の場で実践することが可能になり、実践スキルを深化させると同時に、この共有自体を教育の現場とすることができる。そして、このように現代社会の関心と課題に即した形で、新たな地域資源の発掘と活用による保全を行ない、地域社会に貢献することができる。また、これを常に行政との連携のもとに行い、地域のシンクタンクとしての機能も果たす。
4)理論と実践スキルの総体としての地域資源マネジメント
1)2)3)により、地域住民が誇りをもって「心豊かな共同体としての持続可能な地域社会」を再生?創造するための理論と、社会に還元するための実践スキルを創りあげる。そして、この理論と実践スキルの総体を地域資源マネジメントと定義する。