地理学は、自然地理学、人文地理学という系統地理学と地誌学に大別されています。そのうち人文地理学は、社会地理学、経済地理学、政治地理学、文化地理学、生活地理学、都市地理学など、ここでは紹介しきれない多数の分野に枝分かれして成立しています。一方で地誌学は、人文地理学とも関連しながら、特定の地域についての歴史、風土、慣習、伝統文化などを探究します。
広範囲にわたる人文地理学ですので、地理学者によっても見方は様々と思いますが、少なくとも私たちの研究室では、土地々々の社会的?経済的?文化的な事象を記述する学問と捉えています。こうした人文地理学を基盤に、人間の暮らしやなりわいが営まれる社会的?経済的?文化的コミュニティとしての地域や場所の実体を明らかにし、その将来像を描くための研究を進めています。
01人文地理学を基盤とした地域コミュニティ研究
人文地理学分野で大切にされている場所、地域、領域、風土、スケール、生活圏域といった基本的な概念や見方を基盤に、コミュニティをめぐる諸問題について研究を進めます。特に、温かみのある地域コミュニティの(再)創造に向けて、概念と事例の両面から研究することを重視します。そして、ファッショナブルにもキッチュにもならないコミュニティという実体への理解を、人文地理学から深耕しようと試みていきます。
02コミュニティ論への社会経済地理学的アプローチ
社会経済地理学の視角から、人びとが暮らす街のコミュニティでのなりわいのあり方を模索する研究を進めます。コミュニティ研究は一見、経済的な問題と無縁な印象を持たれる傾向があります。しかし、コミュニティは経済とも関わります。グローバル資本主義の影響による閉塞感を克服するためにも、コミュニティでのなりわいの回復と街に住まう人びとの連帯性を大切に育むコミュニティ経済を探究していきます。
03サードセクターの発想に基づく都市?地域政策研究
「都市再生」「都市更新」による中心と周辺の二極化、中央と地方といった地理的不均等発展、地域間格差を是正する政策的視角を養います。巨大資本による投機的かつ持続不可能な民間主導型「まちづくり」で世界都市の夢を追うのではなく、公共-市場-コミュニティのバランスを育む多様性、互酬性、連帯性を基盤としたサードセクターの発想から、地方圏の独自性と人びとの暮らしに寄り添う都市?地域政策を研究します。
04合併自治体の持続的発展と新しい内発的発展の研究
「平成の大合併」を経験した合併自治体のなかで、中心地域と周辺地域での地理的格差が散見されるようになってきています。近年では、旧町村の過疎地域指定も増加傾向のなか、合併自治体の持続的発展とその希望を紡ぎ出す研究が急務になっています。地域主義や内発的発展という既存の地域政策の枠組みをこえて、過疎指定を受けた地域の持続可能な暮らしのあり方を考えるために、新たなコミュニティの創造を指向するネオ内発的発展(共発的発展)の研究を進めます。