Climate & Environment
日々絶えず変化し、私たちの生活にも大きな影響を及ぼす気象。人間活動が地球環境に多くの影響を与えた結果、地球温暖化やゲリラ豪雨など気象を取り巻く様々な問題が発生しています。pt电子游戏_pt老虎机平台-下载*官网の研究者たちが行う、私たちの健康と生活、そして豊かな地球環境を守るための研究をご紹介します。
地球温暖化をはじめとする気候変動は避けられない状況といわれています。温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑える緩和策だけでなく、すでに起こりつつある温暖化の影響に対し災害や社会のあり方を調整する適応策の導入が喫緊の課題です。私の専門とする大気科学では、暴風雨などの激しい気象から日常的な穏やかな気象までさまざまな現象のメカニズムを解き明かし、将来予測や生活への影響について研究します。
過去に大きな被害を残した台風の観測データを用い、もし別の場所で発生していたらどうなっていたかを数値予報モデルを用いてシミュレーションします。数値予報モデルでは物理学や化学の法則に基づいて任意の地点の風や気温等の時間変化を計算しますので、たとえば台風の経路が少しずれたことによる雨の降り方や量の変化を調べることが可能です。風の強さの変化もわかりますので、実際の被害と比べてどのような違いが生じるかを推定することができるのです。ハザードを正しく詳細に評価できれば、どのようなリスクがありそうかを予測し、対策することができます。様々な気象のハザード評価のクオリティを高めることが今後の重要な研究課題となっています。
同じく数値シミュレーションの事例として、ため池調査があります。兵庫県はため池の数が国内で最も多く、温暖で雨が少ない瀬戸内特有の気候から灌漑用水の確保が必要だった背景があります。ため池には急激な気温の変化を抑える気象緩和の効果があり、池周辺の風の吹き方によっては風下側の地域へもその効果が広がります。一方、離農や耕作放棄などが要因でため池の宅地開発が進み、その数が減少しています。そこで、ため池周辺の気象を調べる「再現実験」と、ため池を住宅地に変えた場合の「感度実験」を比べることで、ため池が周辺の地域の気象にどういう影響を及ぼしているかがわかります。気象学的視点、あるいは物質循環の視点から、ため池の今後のあり方や可能性を裏付けるエビデンスを生物地球化学や水文学の研究者との共同研究として進めることで、農業?防災?環境と幅広い分野でのため池の可能性の発見が期待できます。
拡大する研究
現象のメカニズムの理解をすすめ
豪雨予測の精度向上や気象災害の被害軽減を目指す。
谷口 博准教授
減災復興政策研究科所属(研究者情報はこちら)
専門は気象学?気候学、地球流体力学。 観測データの解析、 数値シミュレーション、 理論計算などを用いて、 都市スケールから地球規模までの大気現象を研究対象としています。 最近では、 学内の複数の学部?大学院とプロジェクトを組み、 主に近畿地方で起こる線状降水帯等の豪雨の予測可能性向上のための観測研究も行っています。 豪雨の予測可能性向上には、 既存の観測では捉えられていないサブ観測間隔スケールのデータの取得とそれら観測データが豪雨等の顕著現象に与える寄与を調べる必要があります。 そのため、 自らラジオゾンデによる観測を実施し、 最適な観測地点を探求中。 最適な観測地点を発見できれば、 豪雨予測の精度向上が見込めます。 将来的には、 常設の観測地点を設置し得られたデータを用いた数値シミュレーションの結果をもとに、 ハザード評価を行うなど広い範囲で役立てたいと考えています。
経済学の中に気象学の視点を。
持続可能な交通の実現を目指して
兒山 真也教授
国際商経学部所属(研究者情報はこちら)
専門分野は交通経済学。例えば、鉄道などの公共交通機関では、安全運行という最大のサービスを提供するために、需要の予測や危機管理など様々な分野の知識が活用されています。気象データもそのうちの一つ。安定的な運行が損なわれると、社会に多面的な損失をもたらす危険性があり、これまでは可能な限り運行を続けることを最優先に、大雨や強風が一定基準を超過すると運転を規制してきました。しかし、2014年からは計画運休が導入されるように。気象データを観測し、運行に影響を及ぼす可能性を事前予測することで、運休を「予告する」ことが可能になりました。予告して交通を一時的に停止させることで、社会への影響を最小限にとどめられます。社会の変化に合わせて業界の当たり前も変わりつつあります。社会のニーズと変化を適切に受け止めながら、今後も「持続可能な交通」をテーマに研究を続けます。
注目の人 -Person-
土地利用データと気象データで都市化がもたらす気候への影響を解明
私は明石市のヒートアイランド現象をテーマに研究しています。市内小学校9校の百葉箱を活用した気温観測を行うことで、市域の綿密な気温分布を把握し、気温と局所的な土地利用の関係を分析しました。加えてそのデータを数値予報モデルによる再現実験の妥当性の検証にも活用し、市域の気温分布の再現に成功しました。今後は、市の都市計画に基づき再現実験において都市化条件を与えた感度実験を行い、暑熱環境がどのように変化するのかを予測します。これらの一連の結果が、ヒートアイランド現象に対する認識強化と都市化による高温問題の緩和策への議論に繋がることを期待しています。
土地利用データと気象データで都市化がもたらす気候への影響を解明
坂本 壮さん
環境人間学研究科 博士前期課程2年
水害対策を通じて目指すのは減災復興という考え方の普及
住宅設計の際に、地震対策は意識されるようになりましたが、水害対策についてはあまり認知されていないと考えています。そこで減災と復興を複合的に捉えた、「水害に備え、復旧しやすい住宅」に着目。 住宅の耐水化の阻害要因や促進方法について研究しています。大規模水害の経験を持つ佐賀県竹尾市にて被害を受けた方々へアンケート調査を行い、生の声から見えてくる課題を分析。自分の研究が、水害対策の領域だけにとどまることなく、災害から学び次の防災に活かす「減災復興」の考え方の認知拡大にも貢献できれば嬉しいです。
水害対策を通じて目指すのは減災復興という考え方の普及
高橋 香帆さん
減災復興政策研究科 博士前期課程2年